僕が数年前に入った刑務所内での出来事です。
そこは恐怖も面白味も特にないありきたりな刑務所でした。
ずっと単調な毎日を過ごすばかりでしたが、ある日このつまらない空気が良い意味で壊されました。
その日収監者たちは、夕食のために食堂へ移動していました。
夕食の時間になると、僕たちは少人数の集団ごとに食堂へ向かっていました。
いつも通り静かな廊下をただ歩いていたところ、とても背が高くほっそりとしたゲイの収監者JJが1人で食堂に向かっているのが見えました。
彼は、初めこそ他の収監者と同じく普通の足取りで食堂に向かっていましたが…
JJの陽気な性格がついに抑えられなかった
JJは通常の歩き方から、徐々に腰を左右に振りながら歩くようになっていきます。
あっという間に腰のふり幅は広がっていき、まるでヴィクトリアシークレットのモデルウォーキングのような歩き方へと変化していきました。
僕たちもその優雅な歩き方に目を見張りましたが、彼はここで終わりませんでした。
ウォーキングを飾る最後のスパイスとなったのは?
この時点でもJJのあまりにも突飛な行動に笑っている者もちらほら見受けられました。
すると、JJは歩みを進めながらリアーナの “What’s my name” をBGMとして、自分自身で歌いながらウォーキングをし始めました。
これには、その場にいた全員が大爆笑し、普段は大きな物音を出すと注意する監視員でさえも笑いをこらえることはできませんでした。
元ギャングで重罪を犯した強面の収監者も腹を抱えて笑っていました。
色のない刑務所で唯一見た美しい景色
この時ほど美しく記憶に残っている光景は他にありませんでした。
ほぼ全員が敵とも言える刑務所の中で、全員が一緒になって笑って楽しんだ瞬間です。
この時のJJは誰を笑わせようとしたわけでもなかったそうです。
JJが自分のあるがまま思うがままに移した行動により、生み出された思い出となりました。
コメント